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2012年6月13日 (水)

帰国便

 ドゴール空港で税関を通った後、機内持ち込み品のセキュリティ・チェックで引っ掛かった。手荷物の中にナイフがあると言う。

 バッグの片隅を探ると、簡易工具が出てきた。

 アーミーナイフと同じような構造で、折りたたまれている部品を引っ張り出すと、ねじ回しになったりペンチになったりするものだが、その中に小刀が含まれていた。

 本来引越荷物の中に放り込むべきだったが、いざというとき役に立つので、どこかで必要になるかも知れないと手元に残しておいたものだ。預け入れ荷物の中に入れずに手荷物に入れたまま失念していたのが失敗だった。

 女性担当官はナイフ部分を引っ張り出してぼくに突きつけ、「こういうものは機内持ち込みが禁じられているのよ!」と険しい声で威嚇するように言う。

 ぼくは殆ど黙ったままで彼女の顔を見つめていた。

 すると彼女は何故か別の係官を呼び、「これはダメよ、ねえ」と確認を求めた。
 それから、「これは没収します」とぼくに告げた。

 他に確認を求めるほどのこともあるまいにと、ぼくは黙って頷いた。

 と、驚いたことに、彼女は小さな声で「Je suis desolee すみませんね」と言ったのだ。

 内心、仰天した。フランスではこういう奴ら、いつも尊大ぶっていて絶対にそんな言葉は吐かない。

 彼女がそう言った理由はよく分からない。本来優しい性格だったのか、フランスでも風潮が変わってきたのか、それともぼくがあまりに堂々としていたので、気圧された感がしたのか。

 なるほどこの時、ぼくは堂々としている風に見えたかも知れない。

 ぶっちゃけ言ってしまえば、折りたたみ式の工具を指摘された瞬間に、「あ、こりゃアカンわ、没収されるな」とあきらめた。

 気に入っていた工具だが、取り上げられるのは既定路線だから、もうそこは考えない。

 そもそもアメリカ政府が、一部の連中の私腹を肥やすために、ウソで固めた「テロ脅威キャンペーン」で頑是ない民衆を騙し続けるからこんなことになるのだと、別の方角に黒い怒りを腹の中で燃やしていた。(WTC 9.11 ホントのテロリストは誰なのだろう

 もう検査官とのやりとりなんてどうでもよかった。ほとんど上の空だったと言っても良い。だから動揺した風も見せず、殆ど余計なことは喋らず、暗い目をしたままじっと突っ立ってるだけだった。

 それだけのことである。
 あ、あんまり生意気な態度を取ると、腹いせだけのために取調室に引っ張られる恐れが無いわけでも無かろうから、よゐこは真似しないように。

 ドゴール空港E棟内部には喫煙部屋がある。免税店という名の土産物屋を少し冷やかした後、ぼくは一直線にそこへ向かった。

 
 

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