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2012年8月 3日 (金)

フランス人は風呂が嫌いか

 Do you take a bath everry day? と、英語でもフランス語でもいいが、フランス人に聞いて、yesと答えが返ってくる確率はきわめて低い。

 げっ、(やっぱり)と眉をひそめる向きも多かろう。

 take a bath / prendre un bain とは、湯船に浸かることを意味する。
 フランスで毎日湯船に浸かる習慣は決して一般的でない。

 バスタブなしのホテルなんて、フランス中に掃いて捨てるほどある。と言うより、その方が多い。アパートでも、浴槽なしなんて珍しくもない。

 古い建物になると、シャワーすらない物件もある。
 ワタシはこうして自力でシャワールームを部屋にあつらえた、なんて紹介記事もある。

 昔は広いアパルトマンだったのをぶつ切りにして分譲したためにそうなったというケースも少なからずあろうが、いずれにせよ、そんな部屋でも受け入れられる土壌があるというのは事実。

 それでもさすがに、シャワールームがないホテルやアパートは例外だろう。

 「毎日シャワーを使うか」と質問を変えてみれば、yesの確率は格段に高くなる。

 ちょっと気の利いた連中になると、ディナーの前には一旦シャワーで汗を流し、こざっぱりしてから出かけたりする。

 それでもやっぱり、毎日シャワーを使うわけでもないといった類の連中も少なくはない。

 それを「汚い」と見るのは、モンスーン気候の中に暮らす人種の勝手偏見というものだろう。

 そりゃ、ま、日本で暮らしてりゃ一日の終わりにはじわっと汗ばんでて、風呂に入らなければさっぱりしない。が、その感覚をそのまま乾燥気候に住む連中に投影しようとしても、無理がある。

 何を隠そうぼくだって、自慢じゃないが、パリで暮らしてる頃は二日や三日シャワーも浴びないことが無かったわけではない。

 少しばかり前に、日本人女子大生による「私の一日」というようなタイトルのweb動画投稿を見てしまったことがある。

 たどたどしい英語で、
  私は一人暮らしです・・・から始まって
  朝起きます。
  朝食はこんなん食べてます。
  学校に行きます(チャリで登校する風景)
  学校での風景
  帰ってから夕食
  お風呂に入ります。
  勿体ないから風呂の湯は抜かずに明日も使います(と、湯を張った浴槽の画像)
  ・・・

 みたいな、全く意味不明、目的不明のビデオだったんだが、これを見たフランス人の反応が、
 「ゲゲッ、同じ風呂の湯を翌日も使うのかぁ!信じられん」
 だった。

 何故「ゲゲッ」なのか、分かるよね。

 このビデオには、彼女が洗い場で身体を洗っている場面はなかった。
 あったなら、ぼくももう少し好意的に書くんだが、いや、それはともかく、

 ご承知のように、西洋式風呂には洗い場というものがない。浴槽の中で身体を洗う。

 その湯を翌日も・・・と見られてもしようがない。このビデオを投稿したお嬢様は、そんなことさえ知らずにいたのだろう。

 民族、国、地域、家庭、みなそれぞれに「常識」を持っている。「常識」であるが故にいちいち意識にも上らない。それが当然だと信じ切っている。

 先の戦争で、捕虜の食事の貧弱さに哀れを抱き、乏しい自分の食事の中からゴボウを分けてやった日本人兵士が敗戦後、その南方の地の戦犯裁判で死刑を宣告された。

 食事を分けてもらったオランダ人兵士がその兵士を「捕虜虐待」として告発したからだ。

 曰く、「木の根を食べろと強要された」

 こんな他愛ない日常感覚の相違ですら、いや、それだからこそ、ぼくらは時として、互いにとんでもない行き違いの森に迷い込んでしまうことがある。

 

 

 ご参考:パリの銭湯 Bains-douches municipaux

 

 

 

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