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2015年9月 7日 (月)

上腕骨近位端骨折 リハビリ 3

 骨折したのは今年の1月24日だった。あれから七ヶ月以上経つ。一ヶ月半ほどで腕吊りを外しした後、週に二、三回リハビリ通いしてきた。

 最初の三~四週間は歩くのすらやっとだった。振動が傷に響くからだ。

 朝の出勤支度で、左腕が動かないようどこかに肘を置いて、右手だけでカッターシャツのボタンを留めるだけの単純な動作にとんでもなく時間を要したり、ズボンも片手だけで両足を通してベルトを締めるのは随分困難な技であると思い知った。ペットボトルの栓を開けることすら容易ではなかった。右手でキャップのスクリューを回すとき、左手でペットボトル本体を握って固定できないからだ。

 片手しか使えないということが生活の中でこんなに困難を極めるとは、思っても見なかった。そういう意味では貴重な体験をしたと言えるのだろう。

 ようやく肩を動かせるようになっても、腕を上げようとすると左肩の三角筋や上腕二頭筋が強く緊張しブルブル震え、痛みで真横にまですら上げられない状態だった。

 腕の上げ下ろしは、ぼくらが意識しているアウターマッスルではなく、実はインナーマッスルが請け負っている。
 それが衰えてしまっているので、アウターマッスルがそれを肩代わりして腕を上げようとしているから無理が出るとリハビリ師が教えてくれた。

 インナーマッスルの筋トレは、鉄アレイやバーベルを使ってやるアウターマッスルの筋トレと違い、ひたすら地味である。500mlのペットボトルに水を入れて上げ下げをひたすら続けるよう指示された。

 骨折なんて骨がくっついてしまえばあとは一、二ヶ月もすれば回復するものと高をくくっていたのだが、年齢のせいなのか左腕を固定していた期間が長すぎたせいなのか、進捗ははかばかしくなかった。

 多少の痛みがあっても我慢して腕を上げようと試みる方が良いのだろうかと尋ねると、痛いのを我慢しても良いことは何一つ無い、とリハビリ師は投げ捨てるように答えた。

 ペットボトルの上げ下げは時間が掛かるし、とても退屈だった。webでインナーマッスル筋トレ法を捜し、いろいろと我流で試してみたのだが、どうもこれがいけなかったらしい。効果のない運動で少なからず時間を無駄にしてしまったようだ。

 長らく使わないと筋肉はその動きを忘れてしまうとリハビリ師に聞き、ふと思い付いた。

 んじゃ、右腕も同時に動かせば、左側はそれを参照してくれるかもしれない

 これは的中した。

 左腕だけを上げようとすると激しく三角筋が痛むのだが、右腕を同時に上げると痛みが随分楽になる。

 これは我ながら大きな発見であった。

 六月終わり頃には日常生活にはほぼ差し障りのないところまで来てはいた。でも大きく肩を上げるとまだ若干刺すような痛みがあるので通院を続けてきた。

 これだけ長く通院していると、受付嬢も完全にぼくの名を覚えてしまっている。

 通勤帰りにクリニックへ立ち寄っていたので、ぼくの順番は大抵一番最後だった。ある日、ぼくのリハビリが終わったのが結構遅くなってしまったことがあった。

 他に患者は誰一人いない受付で支払いを済ませて出ようとすると、自動ドアが開かない。何だろ?とそのまま茫然と立ち尽くしていたら、○×さぁ~ん、ごめんなさぁ~い!!と、小柄で可愛い受付嬢が走ってきて自動ドアを手で引いて開けてくれた。もう患者は全て帰ってしまったと思い、ぼくが勘定を済ませる前に自動ドアの電源を切ってしまっていたのだ。(ここの院長夫人はとても締まり屋なのだと後日聞いた)

 リハビリ師は大阪住之江区出身で、ぼくの弟が住吉区在住だと知り、そこから随分親近感をあらわにして語りかけてくるようになった。弟が開業していると言ってみたら、さっそくwebチェックし大阪に行った際にそのクリニックの場所まで行ってみたと言う。

 そんなことで結構居心地が良く、何となく習慣化してしまったリハビリ通いではあったが、もはや目立った進展も見られない。

 あとは、関節嚢の動きをどうやって改善していくかだけである。

 本日、医師に面談。
 医師はぼくの左腕を回してみて、まだ少し音がしますね。横からの上げがまだ不十分ですが、日常生活に差し支えがないようなら一旦ここで終わりにしましょうかと言い、よくここまで回復しましたねと付け加えた。

 「よくここまで」言われるほどひどい骨折だったらしい。
 それは最初に駆け込んだ横浜のクリニックでも告げられたことではあった。手術措置と紙一重の状態だったと。

 ぼくの担当のリハビリ師は、話題が豊富で話し方ももうまい人だった。

 あそこが痛い、ここが悪いという患者の関節や筋肉の曲げ伸ばしをするこういう職業というのは、その施術の間、相手に合わせた話が上手にできるかどうかというのも資質のひとつなのだろう。

 このクリニックの受付嬢は、瞳の大きな美人系ときゃぴきゃぴギャルの可愛い娘のふたりで、彼女らに会うのも、実は楽しみのひとつではあった。(ときどき怖い顔のオバハンが座ってることもあったが)これでお別れかと思うと、実はちょっと、寂しい気がせんでもないのである。
 

 

 

 上腕骨近位端骨折

 上腕骨近位端骨折 (続き)

 上腕骨近位端骨折 続きの続き

 上腕骨近位端骨折 (4)

 上腕骨近位端骨折 (5)

 上腕骨近位端骨折 その後

 長期間の片腕固定

 上腕骨近位端骨折 リハビリ

 上腕骨近位端骨折 リハビリ 2

 上腕骨近位端骨折 リハビリ 3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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